管楽器歯科 ~管楽器・弦楽器奏者のための歯科治療~

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 私(院長)は幼い頃から音楽が好きで、今でもプライベートで鑑賞したり、仲間とファゴットを演奏したりしています。同じように音楽を愛し、管楽器や弦楽器を楽しまれる方はたくさんいます。しかし管楽器と歯の関係や、歯と音の出方などに興味があり、楽器ごとのアンブッシュアもイメージできる歯科医師はあまりいません。

 

 この分野は、私(院長)が30年以上続けてきた趣味と、専門である歯科治療を融合させて独自に取り組んでいるものです。どの大学の歯学部でも管楽器歯科などというものは教わりません。この分野の先駆者とされる先生は少なからずおられますが、基本的には正解がなく、一人ひとりに対し私(院長)がオーダーメイドする創造的な分野だと思っています。

 

 管楽器歯科を頼って受診される方の多くの主訴は、「噛めるし、喋れる。でも楽器を吹くとき痛い」という「治療」の対象とはいえない悩みが大半です。それに対して私は提案できる選択肢やそれぞれのリスクなどをよく説明し、理解していただいたうえで取り組んでいます。雲を掴むようではありますが、音楽を愛する人と悩みを共有し一緒に試行錯誤することを私自身の楽しみとしています。「音楽が好き」「いい音を出したい」という想いに共感できるので、厄介だとは感じません。むしろ「私にしか聞いてあげられない悩みだ」と熱くなります。

 

 過去にプロの奏者から「やっと話の通じる歯医者さんに出会えた」と言って戴けたことを誇りとして、日々私にできることを模索し続けたいと思っています。管楽器、弦楽器をされる方は、ぜひ歯やお口に関する悩みをお気軽にご相談ください。様々な体験談は同様の悩みを抱えた人たちに勇気を与えますから。

 

はーとふる音楽祭

平成29年7月9日(日)友井健太郎事務所にて行われた、盲導犬チャリティライブ「はーとふる音楽祭」(富山市)に参加しました。

 

 

ミュージックスプリント

 

 

 当院で作成したミュージックアダプター。「次の日曜に吹奏楽コンクールの北陸大会があるのに痛くて吹けない」というトランペットの患者さんに作りました。時間が無かったのでトリミングもしていない模型で作成。フィット感が1つ1つ異なるので、紛失した時のことも考え数パターン作りました。

 

 

 

金管楽器

マウスピースが小さくなるほど、歯との関係が繊細になります。
神経にまで及ぶ虫歯治療の場合、特に注意が必要です。

 

木管楽器

 シングルリードの演奏者の歯科治療は要注意です。不用意な詰め物・被せ物はアンブッシュアを狂わせます。必要に応じて楽器を持ち込んでいただき調整する事も可能です。ダブルリードは基本的に歯が無くなっても吹けますが、唇を支えるために思いのほか歯を使っています。歯並びによっては演奏していると口の中の粘膜が痛いという方がおられます。その場合には歯科の技術で演奏専用のマウスピースを作成します。
 リード楽器ではない木管楽器の場合も、歯科治療で訴訟問題に発展しかねない事例が過去にありました。歯科医師の楽器に対する認識不足の恐ろしいところだと思っています。歯周病により歯を失う事は楽器奏者にとって致命的な場合があります。また歯ぎしりのダメージがある場合、口呼吸が癖になっている場合も演奏に影響を及ぼします。

 

当院の症例1

ミュージックスプリント患者さん作成.jpg

ミュージックスプリント当院作成.jpg

写真左は、クラリネット奏者の患者さんがご自身で工夫して作られたもの。分厚く端が破けています。写真右は当院で製作したミュージックスプリント。薄くて硬い素材を使っています。

 

当院の症例2

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アダプターセット前の右上.jpg

トロンボーン奏者の患者さん。「練習すると口の中が、血まみれになる」という主訴で来院されました。左下前歯の角が鋭く、マウスピースに丁度当たるようです。また右上の前歯1本が内側に入った歯並びをされており、ちょうどマウスピースが窪みにはまって押される格好になり、バテやすいとのことでした。

 

 

実物のアダプター左下.jpg

実物のアダプター右上.jpg

安直に考えて左下は、削って角を丸めてしまえば解決するのかもしれません。ですが、大前提として歯は一度削ってしまうと元には戻せません。歯科医師として虫歯でもないのに「削る」ことはできません。
そこで、左下には帽子のように取り外しできるアダプターを作製。右上の窪みにも同じ素材でマウスピースの当たりを均等にする取り外しのアダプターを作製。右上に関しては成長過程であることや、今後も楽器を続けていくことなどを考慮して、この際マウスピース型の矯正装置で歯並びを綺麗にする選択肢もご紹介しました。

 

 

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上下セットした様子。「小さくて食べそう・・・」という心配から複数個作製し、しばらく使って様子をみて頂くことになりました。

ミュージックスプリントおよびミュージックアダプター基本料金
樹脂素材、ラバー素材:約5000円
金属による鋳造:30000円/個

 

管楽器奏者が日頃から歯科医院でできること。

自分の歯型を持っておく

 詰め物、被せ物、マウスピースを作る際もそうですが歯型をとります。石こうでできた歯型は一定期間保管したあと廃棄されることになっています。それを譲りうければ事故等で歯を失った場合も原型がわかるので以前と同じ形の歯が作れます。「捨てられるくらいならいざという時のために手元に置いておきたい」そんな方はお気軽におっしゃってください。

 

演奏用マウスピースを作る

 ご要望に応じて、演奏時に歯をカバーするためのマウスピースをお作りします。ミュージックスプリントとも呼んでいるもので、演奏用はスポーツ用ほど厚くない、薄めの硬いものが重宝されます。

 

定期的にメンテナンスをうける

 歯を失っても入れ歯をして管楽器を続けてらっしゃる方はおられます。しかし可能な限り自分の歯で楽しみ続けたいものですよね。そのためには日頃からのセルフケアに加え、定期的にプロのチェックを受けることが大切です。

 

スタッフコラムもぜひご覧になって下さいね
『歯科助手×管楽器歯科』(2017年6月更新)

 

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